
豊かな自然に囲まれた箱根の地で、上質な「おもてなし」を提供し続ける箱根ホテル小涌園。
近年、観光需要の回復と人手不足の深刻化という背景から、サービス品質の維持・向上と業務効率化の両立が喫緊の課題となっていました。
同ホテルがこの課題にどのように向き合い、デリバリーロボットを導入することで、お客様の「待ち時間」の解消とスタッフの「接客に集中できる環境」の整備という二つの成果をどのように実現したのか。導入の旗振り役である接客支配人の郡司和夫様にお話を伺いました。

1日2時間半。客室デリバリー業務が、接客サービス品質のボトルネックに。
──最初に導入前の課題について聞かせてください。
郡司様: 最も課題を感じていたのは、お客様からのご要望で客室へのアメニティや備品をお届けするデリバリー業務です。
当ホテルでは、このデリバリー業務をスタッフが人力で行っていましたが、その間はフロント業務が手薄になり、チェックインやその他のご用件でフロントにお越しのお客様をお待たせしてしまうことがありました。当時は、時間帯にもよりますが、3名から4名のスタッフ体制で、そのうち1名がお届け業務を担っていました。

「1日30回〜40回におよぶデリバリー業務が、お客様の『おもてなし』を邪魔している状況でした。」
──どのような備品がデリバリーされることが多いのでしょうか?
郡司様: 主なデリバリーアイテムは、タオルや作務衣(さむえ)といったアメニティ、そしてお子様用の備品類です。当ホテルはファミリーのお客様が多いため、お子様向けの備品のオーダーが多く、デリバリー回数も必然的に増えていました。
──そのデリバリー業務は、具体的な数値としてどれくらいの負担になっていましたか?
郡司様: デリバリーにおいては、備品を準備してからお届けするまでの一連の流れで、1回に要する時間が約4分でした。これが1日40回となると、合計で160分、つまり2時間半以上がデリバリー作業に費やされていた計算になります。
──なるほど。かなりな時間ですね。その時間を従来の労働力で対応するのではなく、DX推進へシフトした背景は何ですか?
郡司様: やはり昔は、労働力で対応した時代もあったかと思いますが、今は「コンパクトでスリム化」という時代になりました。当ホテルもDXを掲げていますので、「機械に頼るもの」と「対面で対応するもの」の区別をしながら対応しています。
対面でのご説明や、リゾート・観光に関するご案内など、人との触れ合いが必要な部分にこそ人的資源を割くため、デリバリー業務の効率化は必須でした。

導入前は、アメニティをお届けするたびにフロントからスタッフが離れる必要がありました。
「楽しさ」という付加価値と「サイネージ機能」による費用対効果の追求。
──サービスロボット導入を決めたきっかけ、ロボットを選定した決め手は何だったのでしょうか?
郡司様: 効率化による作業時間削減が大前提ですが、それだけではありません。ロボットにすることによって、お客様に楽しんでもらえるようなツールにならないかということを考えました。
ロボットを利用することに慣れた方もいれば、物珍しく見られる方もいます。その両方のお客様に対し、非接触でありながらも「楽しさ」という付加価値を提供できるという点も、ロボット導入の大きな決め手となりました。

──デリバリーロボットの導入にあたり、特に工夫した点はありますか?
郡司様: 単に荷物を運ぶだけではなく、費用対効果を高めるために、ロボットのサイネージ機能を最大限に活用することに注力しました。
日中はロビーでホテルの広告宣伝をサイネージに表示しながら巡回させることで、ロボットを単なる「運び屋」ではなく、「宣伝マン」「働き者」として印象づけました。巡回時には、施設内の大浴場、イベント、近隣の施設のご案内などを放映しています。


撮影当日はランタンナイトの紹介をしていました。
スタッフ作業時間を削減。ほぼ全てのアメニティ配送が自動化に。
──ロボットを導入して、変化した業務フローや具体的な成果などを教えてください。
郡司様: 導入前の課題であった1日30〜40回に及ぶ配送業務をロボットが代替することで、スタッフの作業時間は約2〜2.5時間削減できました。
特に、今までのアメニティ関係のデリバリーはもうほぼ全て、ロボットに切り替えました。収納に限りがある一部の備品以外は、デリバリー業務からスタッフが抜ける作業がなくなったため、フロント業務の効率化と安定化が図れています。

──その他、従業員や現場の働き方にどのようなポジティブな変化がありましたか?
郡司様: デリバリーロボットが作業を代替したことで、スタッフの負担が大幅に軽減され、モチベーションや接客品質が向上しました。現場からは、「目の前のお客様に集中できるようになった」「ゆとりが生まれた」という声が多く聞かれます。
また、ロビーでロボットが宣伝巡回している様子を、お客様が興味を持って注目してくださっているのを見ると、スタッフとしても喜びを感じています。

「残業も減り、スタッフ間の連携も深まり、働きやすい職場環境の実現に寄与しています。」
エレベーター連携と多言語PBX連携が実現した、シームレスなサービス。
──今回のロボットの特徴として、「エレベーター連携」があると伺いました。
郡司様: はい。当ホテルの1階から6階まで、ロボットがエレベーターに乗って自動的に移動することができます。これにより、フロントから客室までスタッフの手を介さずシームレスにお届けできるようになりました。

──部屋に到着した際の仕組みも工夫されているそうですね。
郡司様: ロボットが部屋に到着した際に、フロントを介さずPBX(Private Branch Exchange)を通して自動でお客様にお知らせする仕組みを作りました。音声は、日本の方だけではなく海外のお客様もいらっしゃるため、日本語、英語の多言語で案内しています。

──お客様からの反響や具体的なエピソードがあれば教えてください。
郡司様: 特に外国人観光客の方々やお子様には、最先端のサービスロボットが新鮮で楽しい体験として喜ばれています。ロビーを巡回するロボットを見て、興味を持ち写真を撮るお客様も多く、客室への配送時、驚きながらも笑顔でアメニティを受け取る姿が印象的です。

「ロボットは単なる業務効率化のためのツールではなく、お客様に“楽しさ”という付加価値を提供する存在にもなっています。サイネージ機能によって情報発信も担い、ロボット自体がお客様に新鮮な体験をもたらしています。」
多様な機械の可能性を模索し、問題解決につなげていきたい。
──今後のDX推進や、さらなるロボット活用に関する展望を教えてください。
郡司様: 今回導入したロボットには、サイネージ機能の他に、カメラも搭載してもらっています。これを活用して、館内の巡回における安全性や利便性を高めていきたいと考えています。また、将来的に搭載されているAI機能を活用し、対面でのやり取りに活かせないかということも今後検討できればと思っています。

──サービス品質の向上を目指す、同業他社のみなさまに向けてメッセージをお願いします。
郡司様: 要員の不足という課題をどう乗り越えていくかは、各企業様の共通の課題かと思います。
今回のように、デリバリーロボットという機械だけではなく、その多様性を、もっと機械の方にも求められることができると思います。弊社は開発側にも色々と提案をして、賛同していただき、開発を動かしてもらっているので、このロボットも、まだまだこれだけの機能だけではなく、未来またいろんな工夫ができた新しい機能も増えると思います。
ぜひ、他社様も様々な機械の可能性を模索し、問題解決につなげてもらえればと思っています。

| 社名 | 藤田観光株式会社 |
| 設立 | 1955年11月7日 |
| 会社URL | https://www.fujita-kanko.co.jp/ |
| 会社住所 | 〒112-8664 東京都文京区関口2-10-8 |
| 事業内容 | ホテル・旅館業、飲食店業他 |
| 施設名称 | 箱根ホテル小涌園 |
| 施設住所 | 〒250-0407神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1297 |





